職務著作と、私の「とんでもアイデア」たち

2021年6月10日

今回は職務著作についてお話ししたいと思います。職務著作とは、「会社在籍中に制作した作品の著作権は、会社か制作者のどちらに帰属するか」という問題となります。

第15条(職務上作成する著作物の著作者)

1.法人その他使用者(以下この章に置いて「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その制作の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

2.法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラム著作者の著作者は、その作品の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

著作権法第15条を見て頂ければ解るように、在籍中に制作した作品の著作権は、原則的に法人に帰属します。

確かに在職中に制作した作品の著作権が、退職と同時に会社から制作者に移動してしまうと、すでに発表した制作物もさることながら、それらの権利関係の帰属が非常にややっこしくなると思いますので、妥当な法的判断なのだと思います。

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しかし、いくら権利が会社に帰属すると言っても、クリエイターの立場にしてみたら自分が生み出したものって我が子の様に愛着があるものなので、たとえ権利はなくても一生作品の事を忘れないものですよね。

ところで、制作の現場ではよくある事なのですが、プレゼンで却下されたものや保留にされたモノが自分が退職した後に使用されたなんて事が結構あります。

私自身もデザイン事務所に勤務していたときに提案して却下されたパッケージデザインが、ある日お店に並んでいるのを見た事があります。

「ええっ!?」っと1人お店で固まっていました。(側から見たらかなり変な人です。)

私の知り合いは、数十年前に提出した論文が使用されたなんて言っている方もいました。

作者にしてみたら、1つ1つ自分の頭を捻って絞り出したもの、もしくは苦労して描いたりした作品なので、記憶にはしっかりと残り似た様な作品が発表されると結構わかるのですよね。

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ただ、そのままの使用ではなく若干脚色や変更を加えたりしていることも多く、(バージョンアップして良いものとなっていたりしますw)、そういう場合は、
「似てるけど・・・」って自分を納得させて終わらせるみたいなケースも多いですよね。

本来なら自分の作品が世の中に出るって嬉しいことのはずです。しかしこのパターンは何だかすごくがっかりするって感情、クリエイターの方には理解して頂けるのではないでしょうか。子供の成人を見届けられなかったような切ない感覚です。辞めたクリエイターであっても一声かけてくれたら、また違った感情になるのかもしれませんが。

では、この様に在職中のアイデアの権利関係はどうなるのか?と著作権の観点から考えますと、会社に提出したものに関しては、原則的には会社に帰属するという判断が下されてしまうようです。(もちろん、様々な要因で例外もあります。)

ですからクリエイターさんは、素晴らしいアイデアやアプリ制作など、守りたいと思う作品であれば事前に会社側と権利関係の帰属を定める契約書を交わしておく対応を考えておいた方が良いのです。

もしくは、作品を著作権登録で守っておくということも出来ます。

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今後は作るだけではなくて、しっかりと自分の作品の将来を保護していくのもクリエイターの仕事の1つと言えますね。

また、最近はフリーランスや副業でクリエイターや執筆活動をされる方も非常に増えてきています。こう言った方々は、会社に帰属する者とはならないのですが、その著作物がどちらに帰属するかと言った問題では、原則的な判断で会社に帰属すると判断されやすくなるようです。

※会社に帰属しない立場であるほど、後の争いを回避するためにもしっかりとした事前契約書を交わす事が大切だと思われます。

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ちなみに、私が大学時代にアルバイトしていたデザイン事務所では、空いてる時間はアイデアを出すようにと言われコピーの裏紙に色々と書かされたのを覚えています。

アイデア=面白いもの(笑をとりたい)って発想になってしまう当時の私は、ヘンテコなアイデアを出しまくっては、当時の上司を苦笑いさせていたのを覚えています。若気の至りですかね💦

そんな私をグッと堪えて大らかに育ててくださったのだなぁと、当時の上司と同じ歳頃になった私は、懐かしくも感謝の思いでいっぱいにもなる今日この頃です。

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サンリオのハローキティは、世界中に展開される大人気のキャラクターです。キティちゃんから生まれる利益は多大なものとなります。作品を生み出すって本当に夢がありますよね。沢山の素晴らしいモノが生まれる基盤を作るためにも、しっかりと制作者にも利益が入るように、著作権契約や登録をしてくださいね!
著作権契約や、登録については、当事務所へご相談ください!